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10弦ギターについて10Strings GUITar

10弦ギターは、映画「禁じられた遊び」の音楽をギター一本で担当したナルシソ・イエペス(Narciso Yepes, 1927 - 1997)によって考案されたギターで、通常の6弦ギターに4本の弦を追加しています。

調弦について

調弦の仕方には大きく以下の2種類があります。

イエペス式調弦

  ↑赤枠部分は、6弦ギターの調弦です。


ディアトニック式調弦

赤枠部分がレ→ド→シ→ラとディアトニックに下がっていきます↑

2つの大きな特徴

  • 倍音が増える

これはイエペス式の調弦をした時に顕著に現れます。

倍音について少し説明しましょう。
倍音というのは共鳴を起こしやすい関係のある音です
共鳴というのは「二つの音の振動数が簡単な整数比で表すことができる時に起こる現象」をいいます。

音楽で使われる音を物理学的にみると波長と振幅からなっています。
波長は音の高さ、振幅は音量に関係します。
音の速さは、たとえば空気中、0 ℃で秒速約331 mというように一定になるので、音の速さを波長で割れば振動数が出ます。共鳴に関係するのは振動数です。振動数は1秒間に振動している数で表されます(単位:Hz。ヘルツと読みます)。
音叉をみるとa’ = 440 Hzなんて書いてあると思いますが、それはこのことをいっているわけです。

ギターを使って共鳴現象を体験してみましょう(6弦ギターでもできます)。

まず、きちんと調弦して(a’ = 440 Hz)、@弦の開放弦を弾いてすぐ@弦だけに触れて、音を消してみてください。耳を澄ますと@弦以外で音が鳴っているのが聴こえると思います。D弦やE弦から小さな音が出ていると思います(弦に触ってもいないのに音が出ているわけです)。
これが@弦の開放弦の音(ミ)に対する倍音です

次に@弦の1フレットを押さえて(ファの音です)、先ほどと同様に、弾いてすぐ@弦の音を消してみてください。今度は6弦ギターでは、ほとんど倍音が出ないと思います。

6弦ギターでは「@弦の開放弦では倍音が出て、1フレットを押さえると倍音が出ない」ということです。二つの音を同じように弾いても、ほんのわずかですが、倍音が不均一であるために音量にムラが出ることになります。

このときの振動数を調べてみると、

@弦の開放弦では 330 Hz (@弦の1フレットを押さえたファでは349Hz
A弦の開放弦では 247 Hz
B弦の開放弦では 196 Hz
C弦の開放弦では 147 Hz
D弦の開放弦では 110 Hz
E弦の開放弦では 82 Hz
です
(10弦ギターのG弦の開放弦では116 Hz


@弦の開放弦とD弦の開放弦の振動数比は3:1、@弦の開放弦とE弦の開放弦の振動数比は4:1となります(簡単な整数比)。
したがって倍音が出ます。

しかし、@弦の1フレットを押さえたファの音の振動数と簡単な整数比になるような振動数をもった開放弦は6弦ギターにはありません。
ですが、10弦ギターではG弦との振動数比が3:1となるため、倍音が出ます。

音楽的な言葉を使って振動数比を説明するとオクターブの関係では1:2(2:1)、完全5度では2:3(3:2)になります。
もちろん他にも整数比になる関係はありますが、実用的にはこの二つが重要です。

ナルシソ・イエペスはこのことに注目し、番外弦を4本増やすことで倍音の不均一さの解消を図りました
倍音が増えると、「各音の音量がより均一になる→全体の音量が上がる」ということになります。
また、ほどよい倍音が加わると豊かな音色を形成します。

  • 音域が広がる

これはイエペス式の調弦でも、ディアトニック式の調弦でも見られます。
どちらも音域が増えるのは低音側です。
主に他楽器(ピアノ、チェンバロ、リュート…)からの編曲をおこなう時に、有利に働きます。
またギターのオリジナルの曲でも、低音を加えると演奏効果が上がったり、やさしく弾けることがあります。

いろいろな曲での調弦

上で説明したように、倍音の不均一さの解消を図るのが大目的ですが、曲によってはF弦をシやラに下げたり、あるいはレに上げたりして弾くこともありますし、GHI弦も多少の調弦を変えることによって、その弦を解放弦として弾くことで、左手の負担を軽くしたりもします。

以下に、曲によって調弦を変える例を少しご紹介します。

  1. F弦をシに下げる
    ソルのエチュード(月光)のフレーズ出だしのシと最後のシをオクターブ下げると気持ちいい!
    バリオスの大聖堂、ルネッサンスもの、などを始めとして多数。
  2. F弦をラに下げる
    ヴァイスの組曲「不実な女」を弾くときに、ラまで下げます。元々のバロックリュートではここまでの低音があるので、そのまま弾けます。
  3. F弦をシに下げる&H弦をソのナチュラルに半音下げる
    アルベニスのアストゥリアス、ヴァイスのファンタジー、など。
    オクターブ下のシが欲しい&シャープ(#)2つの曲などは、この調弦を考えます。
  4. F弦をレに上げる
    アルベニスのタンゴ、カタロニア民謡の聖母の御子、など。
    E弦をレにする曲のときに、E弦をミのままでF弦をレにして弾くことがあります。ちょっと便利な使い方です。

10弦ギターについてのQ&A

10弦ギターについてよく聞かれる質問などにお答えします。

Q 10弦ギターの最大のメリットは?
A 6弦ギターが含まれていますから、6弦ギター用の曲はもちろん全部弾けて、なおかつ、(番外弦を使うことで)易しく弾ける場合が非常に多いことです。

Q 10弦ギターのデメリットは?
A 6弦ギターよりも多少消音に気を使います。6弦ギターでも消音はしますので、同じかと思います。あとは、弦代がかかる、弦を交換するのに時間がかかる、といった感じです。

Q 6弦ギターを持っていますか?
A 持っていません。6弦ギターで弾く曲はすべて弾けますから、持つ必要がありません。

Q 6弦ギターを弾きたいと思うことがありますか?
A ありません。将来的にも、無いと思います。

Q 10弦ギターは重いですか?
A 弾いてる時はそれほど感じませんが、持ち運びは重いです(^^;)

Q F〜I弦は何を張っているのですか?
A F弦はF弦用の弦を張っています。アランフェスの弦です。G弦はD弦のテンションゆるめのもの、H弦はD弦のテンション強めのもの、I弦はE弦のテンションゆるめのもの、を張っています。

Q 10弦ギター用の楽譜ってあるのですか?
A 10弦ギター用の楽譜というのはありません。普通の6弦ギターが含まれていますから、普通の楽譜で弾いています。イエペスが編曲したカタロニア民謡のカタリーナ・ダリオーのように、10弦ギターで無いと弾けない、という曲はあります。



Q 6弦もまともに弾けないのに、10弦なんて弾けない。
A 私、6弦がまともに弾けてから10弦に転向したのではありません(^^)/

Q どれぐらいで慣れますか?
A 一ヶ月もすれば、6弦部分を弾くことについては、慣れると思います。

Q F〜I弦を押さえることはありますか?
A ほとんどありません。弾くときは開放弦で弾くことがほとんどです。曲によってはF弦は押さえるときはあります。

Q 6弦が弦巻に届かないのですが・・・
A 6弦ギターの場合は、6弦が一番ナットに近いですが10弦ギターだと一番遠いため、届かないケースがよくあります。以下のように釣りで使うような丈夫な紐(写真の青い紐)を弦に巻き付けて、それを弦巻に付けます。



Q 10弦ギター用のカポはありますか?
A 多分ありません。こんな感じで6弦ギター用のカポとウクレレ用のカポを使うことで代用できます。



その他、何かご質問があれば、お問い合わせください。

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